はじめに
今年の4⽉末、新宅百絵さんにインタビューを⾏いました。新宅百絵さんは、⼦どもたちと⼀緒に⼤きな紙に絵の具を使って⾊を塗ることで、⾃由なアート体験を提供する「絵の具であそぼう」などを実施されているアーティストで、現在は東京をはじめ全国を舞台にその活動を⾏なっています。
愛称は「ももレンジャー」で、ご⾃⾝の肩書きを「アートで⼼の引き出しをひらく⼈」と表現されています。私は、彼⼥が明るい笑顔を弾けさせながら、⼦どもたちと絵の具まみれになっている写真を⾒て、「この⼈に⼀度会ってみたい」と思い、今回「えもてなし」を通じて声をかけさせていただきました。
インタビューは、新宅さんの提案で上野の恩賜公園でお花⾒をしながら。インタビューは終始なごやかで笑顔があふれ、その波乱万丈な⼈⽣を明け透けに話す姿に私たちは⼤いに驚かされました。
今の活動を始めるに⾄った経緯や活動への熱い想いを前編と後編の2回に分けてお届けします。
新宅百絵さん 略歴
12 歳〜:地元で子ども会ジュニアリーダークラブ(ボーイスカウトのようなもの)に⼊会し活躍
18 歳 :⾼校のデザイン科卒業後⼀⽬惚れした関⻄のアパレル会社に就職
21 歳 :アパレル会社を退職。地元に⾥帰りをし、実家で過ごす
22 歳 :アルバイトをしながら地元の⼦供会で「絵の具であそぼう」を始める
26 歳 :上京し、「絵の具であそぼう」を本格的に全国で実施
現在 アートイベント ・ワークショップ・アート教室・講師活動・アートパフォーマンなど全国で精⼒的にアート活動を実施
▼新宅百絵さんWebサイト
https://asayakeklkl.wixsite.com/momoe
何か新しいことを始めたい
−なぜ「絵の具であそぼう」という企画を始めたのですか?
初めて開催したのは、4年前の2015年でした。⾃分が⼩さい頃から⼦ども会のイベントって内容が変わっていなくて、何か新しいことをしたいと思ったんです。学⽣の頃から100⼈の⼦どもを相⼿にキャンプファイヤーの企画進行を子ども会ジュニアリーダーとして行っていたので、⼦どもを相⼿に何かをするのには慣れていました。
それで、ジュニアリーダーの時にお世話になっていた⼈に「どうしてもこれがやりたい!」と「絵の具であそぼう」のことを話しました。
そしたら、その場で⼦ども会の会⻑さんに電話をしてくれて、話がとんとん拍⼦に進んで。会⻑を交えて話をし、「じゃあ、やろう」と話がまとまりました。
−最初はご出⾝の⾹川の⼦ども会で開催されていたんですね。当時から今のように⼤きな規模で⾏なっていたのですか?
最初は、学校単位の4つの⼦ども会を対象にしていました。教育委員会にも協⼒してもらって。⼦ども会の昔からのイベントは28⼈くらいだったので、始めるまではこのイベントも何⼈集まるかわかりませんでした。でも、募集をかけたら80⼈くらい応募がきて、正直驚きました。
最初の予算は⼩さかったけど、今年で5回⽬になり、毎年開催するうちに規模も⼤きくなっていきました。今では、⼩学1年⽣の頃から毎年楽しみにして来てくれている⼦もいます。
−最初の開催から、イメージ通りの出来でしたか?
最初やってみたときからイメージ通りでした。「これこれ!」って感じで⼤成功。
でも、⼤⼈は⻘ざめていましたね。私は、いろんな⾊がある感じが楽しいなって思っていま
したが、多くの⼤⼈は、どんどん汚れていく様⼦を⾒て「やめさせなきゃ」ってなっちゃう
んです。
−確かに服や体が絵の具まみれになることって、抵抗感がある⼈も多いかもしれません。⽇常⽣活や学校の図⼯の時間でも、服を汚さないようにと教えられますもんね。
でも、町の芸術祭で描いた作品を展⽰した時、(制作時に怪訝な顔をしていた⼤⼈から)「意
外と綺麗!」という反応をもらいました。
−作品の展⽰も⾏うんですね。⼤きい作品ですし、展⽰は⼤変そうですね。
芸術祭で展⽰する時は、破れたところなどは修理しますが、あとは基本⼿を加えずに展⽰し
ます。
ただの⾃由は不⾃由
−「絵の具であそぼう」を⾏うにあたって、気をつけていることなどはありますか?
危険なことにだけは配慮するようにしています。また、絵の具で⾊を塗るだけではなく、制
作時に⼈形劇や読み聞かせを挟むこともあります。七⼣の時期の開催なら、織姫と彦星の物
語を読み聞かせて描くこともあります。
−物語からインスピレーションを得てそれが作品に反映されるんですね。そのように毎回テーマのようなものがあるんですか?
「寒いから、みんなで春を呼び寄せよう」と呼びかけて「春⼀番」を描いたり、シャボン⽟
を⾶ばして、「この虹⾊をこっちの絵の具でも表現しよう」と呼びかけたこともありました。
⾃由にやって終わりではなく、後付けでもいいから、意味はつけるようにしています。
「何かになった」という実感を得ることって⼤事だと思うんです。
−イベント中に⾏う声かけには他にどのようなものがあるのでしょうか?
途中で⽌めて「この絵の中で発⾒ある⼈―?」と⾔って意⾒を募ることもあります。そうす
ると、「海が⾒えるー」などと絵をよく⾒てお互いに考えたことを⾔い合う時間を作ること
ができます。「1回ももれんがやってみせるよー」と⾔ってやり⽅を⽰したり、私が描いた
絵を指して「これ何に⾒えるー?」と聞いたりもします。そして何より先に「こんなことし
ていいのかな」という感情を取り払ってあげるようにしたいなと思ってます。
ただ、「どうぞ好きにやってくださーい」とは絶対に⾔いません。まず意味づけをしたり、鑑賞遊びをしたりと、⾃由である中にも「こういう時間ですよ」とわかるように道筋をちゃんとつけてあげるようにしています。例えるなら、⼟だけ提供するのではなく、種までまいてあげるという感じです。ただの⾃由って、不⾃由だと思うんです。
−⾃由で楽しい時間になるようにしっかりアシストをしているんですね。でも、集まった⼦どもの中には、どう描いていいかわからなかったり、絵の具まみれになることに抵抗感があったりする⼦もいるのではいるのではないでしょうか?
「汚れるのが嫌だ」と⾔う⼦には筆を渡します。学校の先⽣は「みんなでやろう」と⾔いますが、私は強要はしたくないんです。すると、周りを⾒て、楽しそうだなと思ったら、⾃分からやってみたりするし、回数を重ねるごとにできるようになることもあります。
⼦どもや親のそういう意識は地⽅によって違ったりもします。都会は意外と親の⽅が「汚れてこい」って感じだけど、⼦供はそれに抵抗がある感じかも。全体で作品が進まないときは、2つのグループに分けて競争させたり、⽐べて話をしたりもします。
私のイベントは、⾃由参加、⾃由退場です。だから、開会式から3時間くらいで、飽きてしまったり疲れてしまったりした⼦は帰ってもいいんです。
⼤⼈のツボも⼦どものツボも理解して
―イベントでは、対象年齢の規制はあるのですか?
3歳以下は保護者と⼀緒に参加ならOKです。基本的には⼩学⽣で、⼦ども会に加⼊している⼦が対象です。でも、中学⽣以上になると、筆を持って名前やキャラクターを書いてしまう⼦が多いんです。⼤⼈を参加させると⼤⼈の遊び⽅をしてしまいます。つい具象的に描いてしまうので、そういった場合は消してしまい、⼦どもから⼤⼈に教えさせるようにしています。事前に教えるより、やりながら感じさせるのも⼤事だと思います。
―大人は参加できないのでしょうか?。ぜひ実際にイベントを⾒てみたいです!
いろんな⽅からそのようにイベントに参加したいとのお話をいただいているので、⼤⼈を対象にしたイベントも企画中です。⼤⼈を対象にするならもうワンランク上のことをしたいと思っています。⼀回わーって描いて、破って新しいものを作るとか、塗っても、塗っても⽩い紙を持ってくるとか、⽴体作るとか…⾊々考えています。
ただ⼦どもと同じことしても、「こういう感じか」で終わってしまいます。ただ楽しいだけでは、⼤⼈は満⾜しないし、少し難しい⽅が楽しいはずだと思うんです。⼦どものツボと⼤⼈のツボ両⽅わかっていることが⼤事だと思います。
<後日談>
*2019年5⽉18⽇(⼟)に「絵の具であそぼう番外編」が東京都豊島区の「TUENER GALLERY」 で開催されました。
本イベントの参加レポートは、こちらよりご覧いただけます♫
新宅さんのインタビューは、後編へ続きます。
後編では、活動に至るまでの道のりや、これからの夢をお伺いしました!
後編はこちら♫