アーティスト 新宅百絵さんのインタビュー、後編。
インタビュー後編では、活動に至るまでのこれまでの道のりや、これからの夢をお伺いしました!
私はこれで、⽣きていく!
−21歳の時に、お仕事を辞めて⾥帰りされたことがあったようですが、その後どういう経緯でこの活動に⾏き着いたのでしょうか?
仕事を辞めてすぐは、これからどうすべきかもわからず、動けなくて、⾷べられなくて、毎⽇泣いているような⽇々でした。
そんな⽣活の中で、ブルーシート3枚分くらいの⼤きな絵を実家の部屋の壁⼀⾯に貼って、久しぶりに絵を描いたんです。お店のポップ作り等でイラストを描くことはありましたが、本格的に絵を描いたのは⾼校ぶりでした。2〜3⽇かけて模造紙に描いたこの経験がとても楽しかったんです。
その後キノコを作って天井からぶら下げたり、⽊を作って部屋に出現させたりしました。毎⽇部屋が可愛くなっていくのを⾒て、「これで⽣きていきたい!」と思いました。「これだ」というものが⾒つかった瞬間でした。
それから隣街の市長後援会事務所の天井画を描かせてもらったりもして。地元に帰ってみんなが気にかけてくれたのが本当に嬉しかったですね。⼈⽣が楽しくなることを最優先に考えようと思い始めました。
―きっかけは⾃分が楽しいと思うことを優先した結果だったんですね。そこからなぜ⼦ども向けのイベントを企画するに⾄ったのでしょうか?
町でライブペインティングをしたこともありました。すると、たくさんの⼦どもが⽴ち⽌まって声をかけてくれたんですけど、⼀緒に描かせてあげることができなくて、もどかしく感じたのを覚えています。そんな時、⼦どもたちと⼀緒に、段ボールでお城を作って⾊を塗りたい!と思いつき、そのイベントを実施してみました。そのイベントをしてみて、「⾃分の思い通りにいかないことが楽しい。その⽅がうまいとか下⼿とかの枠を超えられる」ということを発⾒しました。
−なるほど。それで⼦ども会に掛け合い、⾹川での企画が実現したのですね。その後、東京で活動するようになるのはどのような経緯があったのでしょうか?
上京の前はアルバイトでバリバリ働いていました。だから、正直仕事を辞めて東京に出てくるのはめっちゃ怖かったです。上京のきっかけはバイトの契約更新の際に、上司に「今の活動を⼤きくしていきたい」と⾔ったら、「26歳で、⽚⼿間でやりたいことがやり遂げられるのか?」と⾔われたことでした。
当時の職場にいれば、先に⾛っている先輩がいましたが、私の活動には先を⾛る⼈はおらずレールが引かれていません。だから不安でした。ただ、より活動を⼤きくするのなら上京することが必要だと感じて、バイトを辞めることを決⼼し、その2⽇後に上京しました。
楽しいことを⼀緒にしたい!
−5年間イベントを続けられているとのことですが、5年間で何か変化した点はありますか?
イベントの形は変わっていないけど、意識は変わってきました。特に、⼤⼈たちに伝えることが変化しましたね。最初は⼦ども優先で、⼤⼈には趣旨くらいしか伝えていなかったんです。でも、回を重ねる内に楽しかったことを持ち帰り、家族に褒めてもらうことが⼤切だと気がつきました。
⼦どもは「親に褒められたい」っていう気持ちは絶対強いんです。
だから帰り際に「上⼿、下⼿っていう話はせずに、⼀⽣懸命遊んだことをしっかり褒めてハグしてあげてね」と親に声かけをするようになりました。「遊んだけど、褒められた」という気持ちは⾃⼰肯定感につながるんです。
−新宅さんと⼦どもたちの関係性はどのようなものなんですか?
お互いがお互いを褒めあって好きでいられる、友達でいられる関係でいたいと思っています。⼤⼈⽬線じゃなく、⼦どもの⽬線の⾼さで話をします。「上⼿だねー」ではなく、「これクジラー?」と私が聞いたら、「違うよ、カエルだよー」と⼦どもが答える、そんな関係性でいたいと思います。
楽しいことが⼀番⼤事だということを伝えたいですね。⼦どもに「やってあげる」ではなく、私が楽しいと思うことを⼀緒にしたい。私が楽しいと思うことは、⼦どもにとっても楽しいはずだから。
―⼤⼈の気持ちも⼦どもの気持ちもわかるプロフェッショナルですね。
⾃分⾃⾝が⼤⼈の視点も⼦どもの視点も持っているからやれる仕事だと思います。⼦どもであり続けたいと思い続けながら⼤⼈になっていっている感じです。
その視点を⽣かして幼稚園の先⽣や親に向けて講演会も⾏なっているんです。「対⼦ども」のプロフェッショナルとしてお話をさせてもらっています。
いつかは世界進出も…
−これからやってみたいことや展望などを教えてください。
豊島区で「絵の具であそぼう」を企画中です。また、⾶⾏機や電⾞の⾞体に絵の具であそぼうをしてみたいと思っています。乗り物好きな⼦も楽しめるのではないかと。もっと「これに描いていいの?」とかいうワクワクを提供したいなと思っています。
そしてこの活動を⽇本の教育とか⽂化の形にしたいです。将来は海外でもやってみたいですね。
−新宅さん、ありがとうございました!
インタビューを終えて…
抜群の⾏動⼒と強い感受性を持ち、⾃分の道を切り開いてきた新宅百絵さん。
実家の部屋に描いた絵を⾒て「私はこれで⽣きていく!」と感じたその⽇から約6年。
道なき道を切り開く彼⼥の歩みはとても⼒強く価値のあるものだと感じました。
直感が指し⽰す⽅⾓に向かって突き進むスピードや、様々な⽴場の⼈の気持ちを理解する繊細な⼼は唯⼀無⼆の輝きを持っています。話していて、彼⼥が描く絵以上に、その⼼は広くてカラフルなのだろうと思いました。
「アートは⾃由なもの」。そう、私も強く思います。しかし、「⾃由にやっていいよ」と⾔われても、どうすればいいかわからない、だから敬遠してしまう、⾃分にはわからないと遠ざけてしまう⼈が多いのかもしれません。でも本当は、とっても⾃由で、楽しくて、豊かな世界です。だから、今の私たちには、新宅さんのような⼈が必要なのだと思います。
彼⼥の描く作品と未来予想図は、きっと私たちの未来を鮮やかに彩ってくれるのではないでしょうか。
インタビューの最後に、新宅さん、新宅さんのご友人と、えもてなしメンバーで記念撮影♫
2019年3月31日(日) インタビュー @上野公園
文・大森春歌(えもてなしメンバー)
タイトルデザイン、似顔絵制作・タナカ
*文中のお写真は新宅さんのWebサイトより拝借しています。
▼新宅百絵さんWebサイト