インタビュー

“もう少しだけでいいから夢を追い続けたい…”【東京オリンピック2020 競泳代表候補選手:榎本真大さん】インタビュー

投稿日:2020年4月12日 更新日:

はじめに(プロローグ)

今回、ご紹介させていただくのは東京オリンピック2020 競泳代表候補選手の榎本真大選手(23歳)です。

高3最後の大会にして全国2位、そして大学最後のインカレにして初めての全国優勝(種目:50メートル自由形)。他の競合選手とは異なり、決して幼少期から輝かしい成績が出せていたわけではない榎本選手。そんな榎本選手が強化選手に選ばれるまでに至った競泳に対する”姿勢”や”心境”をご紹介していきます。

注)本記事のインタビュー取材は2月下旬に行なっています。

当時大学生の榎本さん

 

「友達に沈めらていた」これが僕の水泳のはじまり

水泳をはじめられたきっかけを教えてください

小学校1年生の頃に親にスイミングスクールに入れられたことですね。実は幼稚園の頃は全く泳げず、友達に沈められたりしていた程で…(笑)

それを見かねた親がスクールに入れたのが僕の水泳のはじまりです。

とても意外なエピソードです…!トップアスリートの方は幼少期から結果を出し続けているイメージなのですが、榎本選手はどのような幼少期をお過ごしになられたのですか?

僕の周りの選手の大半は、小学生くらいから全国大会出場はもちろん、優勝経験のあるような選手など輝かしい経歴の選手ばかりですね。

それに対して、むしろ僕はその逆で、僕の最初の全国大会デビューは中学2年生の時です。初めての入賞(全国2位)は高校3年生の時の「ジュニアオリンピックカップ」です。だから比較的、僕は遅咲きな方なんです。

「もう少しだけでいいから夢を追い続けたい」

普段の練習や大会前に意識されることがあれば教えてください

とにかくサボらず、コツコツ真面目に練習することですかね。自分で言うのもなんですが、僕は性格的に真面目なタイプで、目標に対してただ直向きに練習をしています。この積み重ねが高校3年生の時の結果でした。

大学へは推薦で行かれたとお聞きしました、大学時代のお話をお聞きしてもよろしいですか?

推薦をいただけたのは、本当に滑り込みギリギリだったんですよ。先ほども話しましたが高校時の甚だしい結果といえば、高3時の入賞だけだったので…。

大学に入学してからは「絶対に優勝してやる!」と1年生の時から決めていました。でも現実はそこまであまくなく、インカレ(インカレ水泳) では1年も2年も予選落ちで…。

ハードな練習の中、辞めたくなったりはしなかったのですか?

もちろん練習もそれなりにきつかったので、正直大学2年生の後半から辞めたいという気持ちは結構ありましたよ。最後まで続けられたのは結果を出せていなかった自分への意地ですね。

あの時折れていなかったから、大学4年生最後のインカレで優勝を果たすことができました。

「日本一」に初めてなった時というのはどのような感覚でしたか?

初めて本気で自分が目指していたものがとれて、

「もう少しでいいから夢を追い続けたい」

という気持ちが強かったですね。

でも1年生の時に「絶対に優勝してやる!」と決めていたと同時に、この大学生活で水泳を辞めると決めていたんです。しかし実際に優勝してみると、優勝してからみえる景色も変わり、周りから「辞めちゃうの?」「もったいないよ」と言われたりして…。

色々と迷っている中この結果がきっかけで「東京オリンピック候補強化選手」に選ばれ、水泳を続けようと決心しました。

ここまでお聞きして、榎本選手はとても逆境に強い印象を受けました。優勝した際の大会直前はどのような心境だったのでしょうか?

全てがうまくハマったら優勝できるかもしれない、と内心で思っていました。

これまで僕が結果を残せた時は共通していることがあって、それが「追い込まれた時」

後がない状況になると逆に「絶対結果を出してやるぞ!」という強い気持ちがフツフツ湧いてくるんですよ。

だから僕はある程度一定のプレッシャーがある中で、モチベーションを維持するようにはしていますね。

「自分を深く知ること」

強化選手に選ばれてからの生活の変化を教えてください

一番の変化は練習環境です。強化選手に選ばれると、強化選手合宿の参加や「国立スポーツ科学センター」の利用ができるようになり、トップアスリートの環境の凄さにとても驚きました。

しかしこの素晴らしすぎる環境に対応しきれなったことが、強化選手に選ばれてからの一番の悩みの種でした。

悩みの種…とは、どういうことですか?

強化選手に選ばれ、様々な情報に触れる機会が増え、それらをほとんど鵜呑みにしてしまったことです。本来であれば今の自分に必要なものだけを取り入れ、実践していくべきです。ですが当時はそれをするだけの知識と判断力が欠如していました。

ウエイトトレーニングで言えば、もっと基礎の身体の使い方の練習からすべきところを、無理矢理周りと同じようなメニューをこなそうとしたり…。

その中で自分を見失い、どうすれば本来の自分の泳ぎを取り戻せるのかすら分からなくなりました。

「情報を上手く取捨選択出来なかった」

強化選手になり情報は増えたものの、それを上手く利用出来ず、自分に合ったやり方を確立出来なかった。

ようやく最近になって今の自分に必要なことを見極められるようになってきました。

「自分に合ったやり方を見つける」これはアスリート以外の方にも精通する話な気がしますね。トップアスリート達と練習する中で榎本選手が尊敬する選手というのはどのような方ですか?

”自分の強みをしっかり理解できている”選手です。

トップで活躍している方の大半はこれがしっかりできています。自分のことをかなり深く理解できているからこそ、自分の明確な目標が立てられています。だから、この1年半は特に自分のことを理解するように意識するようになりましたね。

自己理解を行うようになってから変わったことはありますか?

一つ一つの失敗を無駄にしないようになりました。

人間なのでどうしても失敗と向き合うことには抵抗があると思います。でもそこを逃げず、敢えて自分の失敗と向き合い、一つ一つ紐解いていくことで得られたものは沢山ありました。

最後に、「東京オリンピック」への想いを教えてください

自国開催のオリンピックを目指せること、出場できることは人生でとても良い経験になると思っています。

だからこそ結果はどうであれ、全力で日々の練習を考えながら積み重ね、先ずオリンピック出場を目指します。

インタビュー後、渋谷のビルの前で

編集後記

榎本選手、この度はオリンピック直前にも関わらずインタビューを受けて下さり誠にありがとうございました。

1時間程のインタビューの中で榎本選手から受けた印象は、強い「執着心」と「プロ意識」です。目標を抱く人には誰にでも精通するような貴重なお話をありがとうございました。

えもてなし一同は、榎本選手のご活躍を全力で応援しております!大会に応援にえもてなし全員でいける日を楽しみにしております。

ありがとうございました!

2020年2月16日(日) インタビュー

文・長岡亮平(えもてなしメンバー)

タイトルデザイン、似顔絵制作・タナカ

-インタビュー


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

TOKYO2020 MY LEGACY #05: Kanako Yamamoto & Honoka Jinno (The first co-representatives)

絵の具であそぼう番外編 参加レポート

絵の具であそぼう番外編 参加レポート 5 ⽉18 ⽇(⼟)に「絵の具であそぼう番外編」が東京都豊島区の「TUENER GALLERY」で開催され、私はこのイベントに参加させてもらいました。 いつもは⼦ …

TOKYO2020 MY LEGACY #02: Norihiko Tsuzuki(representative of the student organization Origami)

”アートで心の引きだしをひらく人”【アーティスト 新宅百絵さん】インタビュー前編

はじめに 今年の4⽉末、新宅百絵さんにインタビューを⾏いました。新宅百絵さんは、⼦どもたちと⼀緒に⼤きな紙に絵の具を使って⾊を塗ることで、⾃由なアート体験を提供する「絵の具であそぼう」などを実施されて …

ステキ人インタビューNO.005「元気なお母さんが増えたら世の中はもっと元気になる」映像クリエイター兼カフェオーナー:Hirokawa Ayaka さん

今回のステキ人のご紹介は、映像クリエイター兼カフェオーナーのHirokawa Ayakaさん。 大学中退後、バックパッカーとして国内外を旅し、沖縄県宮古島や福島県南相馬では短期移住を経験した後、映像制 …