今回のステキ人は、パーソナルトレーナーのOmori Akiさん。
2人目のお子さんを出産されてから、本格的にトレーナーとしての勉強を始めたAKiさん。現在、大阪の天王寺区を拠点にご活動されています。
前回ご紹介したAyakaさんとは、2年前にAyakaさんが運営するカフェ”baila”で知り合って意気投合。現在では、こちらのカフェスペースでボディメンテナンスカフェと題したワークショップも行っています。
今回ステキ人NO.005でご紹介したAyakaさんが「Akiさんの生き方、行動の1つ1つに影響を受けています。とても素敵な方です。」とご縁を繋いでくださいました。
本インタビューでは、Akiさんのパーソナルトレーナーのお仕事や、仕事をする上で大切にされていること、これから目指されている目標などについてお伺いしました。
様々な価値観を持った人たちが身近にいる環境で育ったAKiさんだからこそ、社会に発信できる取り組み…そして想いをぜひご覧ください!
AkiさんのWebサイト 予防医療×コミュニティ『ninaru』:https://pfixme111.wixsite.com/ninaru-est2019
”生き方が見つかる予防医療” パーソナルトレー二ング
私が行っているパーソナルトレーニングのコンセプトは「生き方が見つかる予防医療」です。
私のパーソナルトレーニングは、皆さんが”トレーニング”と聞いてイメージするようなジムで大型なマシンを動かすようなトレーニングではありません。
普段日常的に歩く行為だったり、立ち座りだったり、階段を登ったりといった日常的な行動をよりしやすくするための”機能改善”のトレーニングです。
また、体が元気になることも大事ですが、コミュニティの部分、社会との関わりも同じくらい大事だと思っています。
一般の方向けのトレーニングのほかに”自分らしく生きたい”と思える人たちの気持ちの面もサポートできるようなプログラムやセミナーも行なっています。
ボディメンテナンスカフェについて
多くの人が”トレーニング”に対して「すごくお金がかかるんじゃないの?」と心理的なハードルを持っていることを普段から感じていたので、そのハードルを低くするような、気軽にトレーニングできるような場所はないか?と日頃から考えていました。そして、ある時”コーヒーが運動に有効”という一説を目にしました。
これは、カフェインで交感神経が優位になって、より代謝が上がりやすくなるということなのですが、一部の地方でカフェでトレーニングを行うお店があることを知り、自分もカフェでトレーニングを行うための場所を探すようになりました。そしてAyakaさんのカフェで、カフェとトレーニングを組み合わせた「ボディメンテナンスカフェ」をスタートすることになりました。
baila(クリエイティブスペース+カフェ)Webサイト:https://buncacreate.studio.design/baila
Akiさんがパーソナルトレーナーを始めたきっかけ
もともと自分自身がカラダを鍛えるのが好きだったので、色々なジムへ行ったり、エクササイズをしたりしていました。でも、それはあくまで自分の趣味としてのトレーニングでした。
転機は、2人目の子を生んでからでした。産後トレーニングをしていたときに、たまたま通っていたヨガの先生が「よかったらカラダの機能や解剖学について本格的に学んでみない?」と声をかけてくれ、エキスパートの先生を紹介してくれました。
そこから勉強を始めていったのですが、自分がカラダを動かしていることもあるので、それがとても面白くて…のめりこんでいきました。
ちょうどその時、自分自身の今後のキャリアについて考えていたこともあり、こちらの道を歩んでいこうと決断をしました。
もちろん、いきなりその道一本で生活していくことは出来ないので、まずはアルバイトからでも働いてみようと思い…求人を探すと、ちょうど家の目と鼻の先のデイサービスで友達が看護師をしていて、リハビリの助手を探していました。
まずは、そこに身を委ねるような形でリハビリに携わるトレーナーとしてスタートをしました。
解剖学の勉強をしながら、デイサービスで実際に多くの人のカラダを診て、トレーナーとして経験を積んでいきました。
そして、トレーナーとして沢山の高齢者のカラダを見ていくうちに、ある時、自分自身の”ヤバさ”に気づきました。
若い頃、今の自分なんかよりもたくさん歩いたり運動したりしてきたはずの高齢者の方が、年をとってこんなにもカラダの不調を訴えている…そうなると人生100年時代と言われる、私たちの老後のカラダは一体どうなってしまっているのだろうか?
すでに今も何かしらのカラダの不調を感じているなかで、あと60年以上も健康的に生きていけるのだろうか?そんな”怖さ”を覚えました。
”今の世の中には、大型のジムで汗を流すような鍛え上げるトレーニングだけではなく、日常的な行動を継続して行えるための寄り添ったトレーニングが必要だ。”
そんな危機感と想いを胸に、それから本格的にパーソナルトレーナーとしての道を歩むようになりました。
LGBTQの方向けのトレーニングやセミナーも開催
私は、一般の方に向けたパーソナルトレーニングのほかに、LGBTQの方に向けたトレーニングも行なっています。
私の両親は、私が3歳の時に離婚をしました。私は、物心つくときからシングルマザーの母に育てられたのですが、母がLGBTQの人たちとの交流を多く持っていたこともあり、様々な大人が母の子育てのサポートをするという特殊な環境の中で育ちました。
そんな事情もあって、私は”自分にとって当たり前”だと思っている感覚が、世間一般的な感覚とは異なる…ズレたまま今日まで生きてきました。
私自身は、その”ズレている”ということに対して、自分の中で”折り合いをつけながら生きる”というやり方でこれまで生きてきたのですが、ただ、”折り合いをつける”ということに対して、どこかモヤモヤしていた部分もありました。
ある時「ここらで折り合いつけるのやめてみよう」そう思ったんです。その理由には、LGBTQへの理解が進んできたという時代の流れもあります。
どんな人でも平等に参加できるトレーニングを提供したい。カラダの健康だけではなく、自分らしく生きたいという気持ちの面もサポートしていきたい。
自分自身の人生経験とスキルを組み合わせた、自分だからこそ出来るトレーニングを。
それからLGBTQ向けのトレーニングを行うようになり、今はセミナーやイベントなども実施しています。
LGBTQの方へ向けたトレーニングで大切にされていること
LGBTQの人は、トレーニングに行くだけでも大きなハードルがあります。まず更衣室の問題があるので、最初に自身の性についてカミングアウトする必要があるからです。
そういった事情もあり、なかなかトレーニングに行くことが出来ずに、健康面で不安を抱えてしまう人は少なくありません。
世界的に見ても、子供の頃から体育に参加することに抵抗があるため、一般的な人と比べて健康面で差が出ているというデータもあります。
まずは、その心理的なハードルを下げてあげること…”ここなら安心して通えますよ”というメッセージを伝えるようにしています。
また、自分のカラダにコンプレックスがある人は、心理的な抵抗から普段カラダをあまり動かし慣れていません。
大きく手を広げて寝そべる…そんな当たり前のように感じられるようなことも上手に出来なかったりします。
精神的な部分というのは、カラダを動かすことに大きく影響します。
精神的な部分をリラックスして取り除いてもらうことも、トレーニングをする上では心がけています。
”自分がどう見られたいか?”それは社会から受けた影響がものすごく大きい
これはLGBTQの人だけでなく、全ての人に対して言えることですが…トレーナーとして経験を重ねてきた中で感じたのは”自分がなりたい体つきや価値観は、社会から受けた影響が大きい”ということです。
「痩せたい!」「細くなりたい!」といった願望を多くの人が持っていると思いますが”そのカラダは、自分が本当に好きになれる理想の姿なのか?”というと、そうでないこともあると感じています。
自分自身が”本当はこれでいいと思っている姿”と”社会から受けた影響によって作られた自分の姿”とのズレに勝手に一人で苦しんでいないか?悩んでいないか?
きっと誰しもに言えることだと思います。自身が持っている”価値観”について今一度考えてみてほしいです。
Akiさんが大切にしていること ”何回も自分に立ち返る”
個人で活動をしていると、アウトプット中心で発信することばかりを考えてしまう人になりがちです。
そうすると知らず知らずのうちに”発信するために活動する”ようになり本来の目的を見失ってしまいます。
だから”何回も自分に立ち返る”ことは、大事なことだと考えています。
「今、自分が何をするべきか」「どんなことが社会に必要とされているか」何度も考えるように心がけています。
誰もが自発的に運動をして健康に生きられる世の中に
フィンランドでは、一般的にエステやマッサージをリラクゼーション目的でお客さんが利用しないと言われています。
”自分のカラダの健康は自分で解決するもの”という意識があるからだそうです。
その点で言うと、今の日本はその逆です。
日本人は、人の手を借りてリラクゼーションや健康を求めていきます。本来ならば、自分のカラダは自分でメンテナンス出来ることが理想ですが、自分のカラダを人の手を借りないとケアできない。
これは日本のストレス社会も影響しているのだと思いますが、相当日本人の心は疲れてしまっているんだな…と感じています。
そんな心身に余裕を持ちづらい今の世の中で、自分から自発的に動いて、運動したりストレッチしたり出来る人を、私はトレーニングを通してもっと増やしていきたいと思っています。
そのために”どんな人でも平等に参加できるトレーニング”をこれからも行なっていきたいです。
最後に…Akiさんが思うステキ人とは?
人の痛みを想像できる人
編集後記
「世間一般とは異なる環境で育った」とインタビュー中に話されていたように、物心ついた時から様々な人たちに囲まれた環境で育ってきたAKiさん。
そんなAkiさんに、最後に「これまでのご自身の経験を踏まえて、今後より多様化される社会の中でどんなマインドを持つ人が増えてきてほしいと思いますか?」という質問をしました。
すると…Akiさんは少し考えて「自分の価値感を疑う人がもっと増えて欲しい」と答えてくれました。
そして…
「世の中には、今まで自分が出会わなかった人がごまんといる。自分の頭の中では、想像もつかないような生活を送っている人もいる。
そんな社会の中で人は、誰もが自分の価値観を元に発言をして、行動をとる。
だからこそ、自分の発言や行動…価値観に対して”本当にそれでいいのか?”を自問自答してほしいなと思います。」
と続けて、柔らかい優しい口調で話してくれました。
ステキ人とは“人の痛みを想像できる人”。その重みをより感じたAkiさんの言葉でした。
誰に対しても平等に接するAkiさん。つまりそれは、Akiさんが誰からも愛される存在であるということ。
これからも多くの人に愛を与え、そして受けながら、世の中を健康的に明るく元気にするAkiさんの活動を応援しています!
2020年7月25日 インタビュー by Zoom(タナカ・さき)
文・タナカ
タイトルデザイン、似顔絵制作・タナカ