ヤンさんがライブアートを始めるに至った経緯を教えていただけますか
元々23歳くらいまでバンドをやっていたんですよ。で、バンドが崩壊して暇になって、「何がやりたかったかな」って考える中で、一回実家帰ってみました。それで一週間ほどして、幼稚園や小学校の卒業アルバムを見てたら、「将来の夢は絵描きさん」って書いてあったんです。
それで自分の夢を思い出して、「そういえば小学校の時とかも、ずっと描いてたな、なんか絵描いてみようかな」って思って、そっから描き始めてみたんです。
そしたら噂を聞きつけたライブハウスの店長に「お前ライブハウスで絵描けよ」って言われたので「いいよ」って答えました。でもその当時は「ライブペイントって何?」っていう状態で、何を持っていけばいいかわかんないし、何を描けばいいかわかんないというくらいでした。
でも当日「30分用意したから」って言われて、それがオープン後の一番人がいない30分。「30分でなんか描けんのかな」って思いながらスタートして、それが数こなしていくうちに、自分の中でターゲットを決めるようになりました。「客一人もいねえ」って時に、誰に向かって絵を描くか。
そんな中でリハーサル見て、自分が気になったバンドに向けて絵を描いたりとか。そういうのをずっとやってたら、短時間で、ストーリー性とか、短編映画みたいな流れのあるライブペイントができていったという感じですね。
その当時から、全国を回りたいと思っていたんですか
そうですね、なんか漠然とですけど、家で描く絵があんまり好きじゃなくて、「もっといい絵描けるんだけどな」って思ってました。行けば行った先で30分しかもらえないので、確実に絵は上手くなっていきました。絵の具の消費量、やばかったですけどね(笑)。
全国でやるようになった時のマインドや戦略はありましたか
実は「アートの日」を8月2日に設立しようっていうのは“表の”テーマなんですよ。
裏テーマがあって、47都道府県みんなでやったら、絵描きがどこにでも行けるようになるんです。リーダーを頼って、本当に日本一周できちゃうんですよ。その県の人がアテンドして、しっかりお金もそこに落とせるっていうのが、各県であったら、各県にファンができると思うんです。
それで、それをまとめて、ツアーファイナルとかで絵描きのワンマンとかがあったら面白いじゃないですか、めちゃくちゃ壮大な夢ですけど。
その県では有名だけど、一歩出れば有名じゃなくなるっていうジンクスの打破を全国単位で考えるってことですよね。
さらにこれが王道になると、この王道に反する人が出てくるんですよ。やっとアウトサイドがそこでできる。それで、アウトサイドの人気が出るんですよ。
「そんな真っ当に肩組んでやっている奴らなんて」っていうのが出てきて、そっちがまた発展すると思うんですよね。でも実は8月2日に集まった奴らはもともとそっち側だったんですよ(笑)。
そういうロジカルな考え方はどこから来るんでしょうか
ライブペイントを始めた時にどうすれば、お客さんがびっくりするかとかずっと考えていたので、30分しかない中で、始める前に8人しかいなかったら「終わった後に何人残ってるかな」と考えたりとか、お客さんが減っていれば、その理由を考えて「ここの展開が弛んだんだろうな」とか「即興性が甘かったかな」とか。
ヤンさんの中で、今後、日本の中でアートと社会のつながりはどうなっていくか、イメージはありますか
社会的になればなるほど、薄まっていくとは思うんですよ、アート性っていうものは。でもその中心に、絵描きが一人リーダーとしていれば、すごく濃厚なものにはなるのになって、漠然と思ってるんですよ。さらに国と仕事したら、道路にだって、壁にだって、電信柱にだって絵が描ける。そういう都市が一つくらいあってもいいんじゃないかなって思いますね。
…だから、「絵描きかっけえ」って子どもたちに思ってもらいたいです。
ヤンさんがやられている「アートの日」を作るという「場所作り」において、全国を回られてる時にそういう場所に制約があったり難しいと感じることがありましたか?
ありますね。場所によっては。今回大きい進歩としては2年前から「京都10人展」っていう、京都のいい絵描きを集めて展示させる展示会をやっています。
これを始めたきっかけが、京都で「LIVE ART MEETING」やりたいなって思ったからです。市にフライヤー持って行ったり地道に回った結果、今年、右京区役所にバックについて頂けたんです。「しっかりやれば、実現できんだなー」って思いました。
着実に段取りを踏まれて計画されたのですね。
はい…アナーキー気取んのは、もっと先っす。バーンてぶつけて、「アートだー」っていうのはまだまだ先の話ですよ。ライブアートとかがどういうものかがわかってもらう、しっかり絵を描いていくことが大事です。
今何もない状態でそれをやっても、まだお客さんは「アートだ」としか言いようがないような状態ですよね。将来的にお客さんが増えてきて、「アートだね」って言われるのは正解だと思うんですけど。
子供の頃にライブペイントって見る機会ないですよね、地域の方が触れられる貴重な機会でした。
自分がイケてるかどうかでその子のベクトルが変わると思うのでちゃんとしなきゃなって思います。自分の絵のテーマが「日常のスコトーマ」なんです。
“「日常にはもっとアートが溢れてる」っていう日常にある盲点を知ってもらいたい”
そこに繋がると思います。
2020年の展望や意気込みを教えてください
本当は来年47都道府県揃えたかったけど、まあ、25都市は確実に合わせて、夏の8月1週目から2週目を全国各地が彩りがある週にしたいなって。
そこに色んな人を巻き込んで、大規模に、色のある夏を作りたいなって。最終的には47都道府県揃えないと意味がないと思ってます。
ヤンさん、ありがとうございました!
最後にヤンさんが思う、世界中の人に紹介したい日本の良いところを書いていただきました!
お忙しい中、貴重なお話をいただき本当にありがとうございました。
<編集後記>
今回のインタビューを通し、ヤンさんの少し強面なお顔の奥には、全国の仲間を思う熱いアーティストの一面と、アートの未来を手繰り寄せる強い意志と緻密な戦略を持つリーダーの一面がありました。ヤンさんの壮大な野望は、日本の未来のアートを照らし、新たな道を創る契機となるに違いありません。
私たち「えもてなし」は、8月につくばで開催された「LIVE ART MEETING」に、似顔絵ブースとお絵かきコーナーを出展しました。そこには、地域の方々が足を運び、ライブアートを間近で目撃し、気軽に参加できる場がありました。
その一員として参加させてもらい、アートが人を媒介し、真夏の1日を彩る鮮やかな熱気に満たされた空間は、いずれの参加者にとっても、大きな感動をもたらしているように感じました。
来年以降の開催で、どんな世界が広がっていくのか、楽しみで仕方ありません。
2019年8月19日(日) インタビュー @渋谷
文・大森春歌(えもてなしメンバー)
タイトルデザイン、似顔絵制作・タナカ
*文中のお写真はJAPAN LIVE ART MEETINGさんのWebサイトより拝借しています。
▼JAPAN LIVE ART MEETING Webサイト